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その日の夜。
帰宅した私はパソコンへと向かう。趣味であるオンラインゲームをする為だ。
「アイツは、っと……もう繋いでる。さすが早いなぁ」
ゲーム内の相方であるハルトくんは先にログインしていた。私は慣れた手つきでキーボードをカタカタと叩き、チャットを打ち込む。
〔やっほ、ハルトくん〕
〔お、アリスか。どっか狩りにでも行くか?〕
〔んー、ボクはもうすぐご飯かも。食べ終わってからでもいい?〕
〔もうそんな時間だったか。了解〕
『ハルト』――稀にでなく、普通によくある名前だ。
なので彼と出会った時も一切気にせず、誰かと結びつけるような事も全くなかった。
そんなある日、ハルトくんがやってるというSNSを紹介され……それを見た私は愕然としてしまう。
――あれ。この風景、どこかで見たことあるような。
――あれ。この学校、私の通ってるとこと瓜二つだ。
――あれ。この男の子の顔……。
……あろうことか彼はそのSNSに、容易に個人を特定できてしまう情報や写真を載せていたのだ。
誰彼構わずそのアカウントを教えてるわけでもなさそうだからまだ良いのだけど。このご時世なのだから、できればもう少し危機感とか持って欲しい。
〔そーいえばさ。好きな子と何か進展あった?〕
〔いや、邪魔された。毎回しゃしゃり出てくる、ウザい取り巻きがいてな〕
〔へ、へぇ? そんな子がいるんだ?〕
〔ああ。俺とその子の仲を進展させまいと阻んでくる、大変鬱陶しい奴なんだ〕
〔そう、なんだぁ……〕
……びきびき。幸い手元に鏡は無かったが、今の私は間違いなく恐ろしい形相をしていることだろう。
確かに美咲とはいつも一緒にいるけど、本当に私の存在だけが原因なのだろうか。奴のヘタレ具合は、そういう問題ではない気がする。
まぁいい。明日、確かめてみることにしよう。
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