私とボクと、ヘタレバカ。

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 次の日の昼休み。  性懲りもなく奴がきた。寸分違わぬ、堂に入った不審者っぷりを披露している。  頭痛を堪えながら、授業中に七秒程度で考えた作戦を決行した。 「あ~! そーいえばわたしぃ~、せんせーによばれてるんだったぁ~!」  棒読みでわざとらしく、晴人にも聞こえるよう声高らかに宣言する。 「そーゆー事だから、ごめんね。先に食べてていいからね」 「う、うん。行ってらっしゃい、莉香ちゃん」  ぱたぱたと退室し、一度晴人の視線から外れ……すぐ踵を返す。  念の為に物陰に隠れるが、どうせ奴は美咲の事しか目に入ってないし、多少お粗末でも問題ない。  どこぞのスパイよろしく、手鏡を用いて教室内の様子もばっちり押さえる。  さぁ。しかと見届けさせて頂きますよ、お二方!  ……こそこそ。  ――……ちら。  ちらっ……こそ、こそ……。  ――……ちらり。  こそっ……ちらり。こそこそ……ちらっ、ちらっ。  ――…………ちら、ちらっ。……かぁぁぁ~~。  ……ごんっ。  鈍い音が響いた。何を隠そう、私が壁に頭を打ち付けた音だ。 (なんっっっにも! 変わってねぇじゃねーですかっ、あんっのヘタレぇええッ!?  っていうか美咲かわい! じゃなくてっ、アンタも目が合った程度で顔真っ赤にして俯いてないで可愛すぎ……だから違くってえぁぁあああ!)  ごんごんごんごん。  廊下を歩く人達の目に映る私は、恐らく晴人以上の不審者と化してしまっているのだろう。  自前の鈍器(あたま)で壁をぶち抜きかねない程の轟音は二人にも届いていると思われるが、これじゃどうせ進展なんて望めないし。罪悪感など欠片も無い。  散々打ち付け、息を切らし肩を大きく上下させ……ようやく平静を取り戻し始めた私は、赤くなってしまったであろう額を摩る。タンコブはできてない。良かった。  ――うん。お昼ごはん食べよ。
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