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四角い部屋の形に沿うように、壮年の男女が人の頭より高い位置でこちらを見下ろす。数で言えば十人ほど。光量の具合によって誰も彼もシルエットしか見えず、表情を伺い知ることができない。
けれど、ここにいる連中がどういう種類の人間なのか、アルはきちんと理解している。主に国家権力の中枢におもねる、小国なら早晩のうちに消し去れるような、そうした集団。
その上で、この査問会が正式な手続きの上で成り立っているものでないことも、アルは十分承知している。今居るお立ち台は強化金属の檻に囲まれ、両足は電磁拘束具で足踏みも出来ない。
おまけに身体は灰色の拘束衣でがんじがらめだ。両腕を組んだような状態で保たれ、きっちりと形作られたギプスのように、身動きがとれない。
アルは不承不承と言った具合で、暗がりに座ってしかめ面を浮かべているであろう、お歴々を見遣る。暗闇の中に隠れているとはいえ、角度を変えたり、両目を細めたりしても、黒いベールの奥に焦点が合わない。
原因はこの檻か、向こうの青い間接照明か。視覚誘導によるカモマスキングの類いだろうけど、色覚情報の欺瞞という線もある。アルはぼんやりと、どっちだろうなぁ、なんて考えながら虚空を見つめる。
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