11人が本棚に入れています
本棚に追加
「当査問会は即決裁判を前提としております。大罪人アルベルト=ラプラスの処遇を、16歳という年齢、人智を超えた科学資産、冷酷無比な虐殺者、敗戦国の戦争犯罪人など、諸々の要素を加味して判断する場でございます。どうか、誤りの無いご決断を」
老女史の諫言で場は静まり返り、浮き足だった空気は元に戻る。中々、場の統制が利いているようだ。
間隙に挟まった静寂。アルは今度こそ押し黙り、議論の行く末を見守ることにした。そろそろ、両足の自由が欲しい頃合いだし。
「……君の科学的価値、国家の資産としての働きだけを見るなら目を見張るものがある。認めよう、君は紛れもない天才だ」
「……んふふ」
表情がにやける。素直に褒められた事実が、なんとなく嬉しく感じてしまう。しかしそれは、この場に於いて挑発以外の何物でも無い。
老女史の視線がきつくアルに当たる。ハルはバツが悪そうに咳払いをして、元の表情で向き直る。
「だが、君が我が国民に強いてきた罪業は、とてもでは無いが許しがたい。この砕け散った世界にあって、未来の行方すら放逐された世界にあって、君の頭脳がかの“最悪の帝国”の領域下で生まれてしまったことが、どうしようもない敗戦の運命に乗せられたことが、純粋に残念でならない……」
最初のコメントを投稿しよう!