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“異界送り”の悍ましい点は、その即時性と効果先にある。
その昔、人類がまだ丸い地球の上に居て、農耕技術の発展により漸く一定領域での社会性を獲得した時。その枠組みで行われる裁判の極刑は死刑と、同等の罰としてもう一つの刑罰があった。
「村八分」と、呼ばれる現象。自分が慣れ親しんだ土地、社会からはじき出され、二度と迎合されないという現実。小さな生存領域の小さな共同体というのは、詰まるところ世界そのもののシステムと様態は変わらない。
世界から出て行く自分は、その世界から死ぬと言うことだ。客死の寂しさを慄然と説いていた物語作家は、果たして誰であったか。
「ーーで、まぁ。 “異界送り”ってのは、それと同じ事をするだけなんだよ。文字通り、自分たちのと異なる世界へ追放ってね。しかも原理は次元と空間に無理矢理穴を空けてそこに放り込むだけだから、簡単かつ即時なわけ。故郷で死ぬことが許されないって点でも、精神的な死と繋がるわけだし、効果はてきめんだよね」
アルはそう言って台詞を続ける。辺りは暗く、光はある一点から薄く差している分しかない。
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