第一章

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 『ファイアボール』  『ウィンドスラッシュ』  『ロックショット』  『アクアバレット』  無感動な声で、無機質な動作が、何事かの暴力を生み出す。赤い火の玉、無色の斬撃、飛来する巌、水流の銃弾。四方から囲むように、一点へ。  そこにいる、とある人物へ向け。無数の、間違いなく攻撃と言って良いそれは、向けられた相手に逃げることを許しはしなかった。  「ーーフフン♪」  しかし、その人はーー彼女は、事も無げに愉快そうに笑う。振り下ろされる無数の暴力を前にして、  「遅すぎ♪」  一言呟いて、疾走する。風か獣に成ったように、火球や岩塊を滑り抜け、気付けば飛翔するように真上へ飛び上がる。  すぐさま、自分の元いた位置へめがけ、自前の得物ーー透き通るような水色の槍を差し向け。小さく、一言、投げ掛けた。
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