第一章

5/32
前へ
/55ページ
次へ
 「乱れろ水花ーー『フロッシュロータス』」  言葉と共に、槍の切っ先へ現れる水の塊。一瞬で圧縮され、小さな球状となったそれは、穂先の定めた場所へ向かって一直線に放たれる。  必然、地面に触れる。  そして爆発。  圧縮された力の分、膨大に解放された衝撃は、霧もその中に隠れ潜む何者かも全て薙ぎ払った。そうして出来上がった空白地へ、何の憂いもなく降り立つ。  「よっ、と。これで綺麗さっぱりだね。流石はわたし! 出来るオンナだぜわたし!」  綺麗に均された空間を見回して、勝ち誇るように満面の笑みを浮かべる人物。青い長髪をサイドテールに、丸眼鏡で快活な顔立ちを飾る、場違いな正装の女性。  その足元に、がしゃりと何かが落ちてきた。先ほどの衝撃に吹き飛ばされた、残骸である。  肉や骨が奏でる音ではなく、鉄や器物に近い物体が、壊れるような音。見遣るとそれは、人の上半身のような形をしている。手があり、頭があり、胴も胸もある。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加