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その女性、ルルカと呼ばれた彼女は猛烈な突風に洗われながら、それでも平然と元の場所にしゃがんでいる。自身が見分していた筈の、人じゃない何かも転がって消えるなか、埃でも吸ったように軽く咳き込むだけ。
「ケホッ、ケホッ。う~~けむいし派手すぎだし……何なのよ、もう」
「それがアンタの戦闘フォルムか? なんか軍属の制服みたいだな。ボタンの数多いし、色も藍色っぽくて暗いし」
光の柱が立ち消える。暴風と爆発とが止み、この空間の全てを覆っていた、霧も煙も消えた。後に有るのは鮮明に開けた視界、灰色や砂色の混ざり合った岩山の表皮、抜けるような青い空。
その中心点に佇む、鎧われたような居姿の人物。白銀の甲冑を纏っている、様にも見える。
しかし、騎士甲冑のようにごちゃごちゃした装飾はなく、見てくれはやせっぽちに見えるほど細い。けれど丹精に、丹念に練り上げられた肉体の様に、その身体はしっかりと引き締められている。飾りらしい飾りと言えば、角のように伸びた突起が二本、側頭から張り出しているだけ。
顔面も味気なく、目鼻立ちの無い、無貌の仮面があるだけ。その要素も含めて、思うにこれは鎧というより、スーツなのかも。
ルルカは面白そうに笑みを浮かべて考える。
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