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「ええっと……確か、アルだよね? キミの名前。それだけは覚えているよ、わたし!」
「さっき会ったばかりとは言え、ヒトの名前を忘れんの早すぎだろ……まぁ良いけど」
カチリ。小気味の良い音がして、無貌の仮面が分解される。幾つかにパーツに分かれ、身体の線に沿うように何処かへ収納されると、それを身に纏う本人の素顔が現れる。
黒い短髪のストレート。物憂げな、あるいは眠たげな角度で開かれた両目。次いでに気だるさが張り付いたような口元は、苦笑いの形で留まっている。
「アンタも変わったテクノロジーを使ってやがるな。どうやんだ、それ?」
「これは“魔法”だよ。ま・ほ・う。自分の扱う魔力、“イド”を源に、術を行使するんだよ~~♪ で? そちらさんのソレは何? 周りの人形たちの親戚?」
「“強化外骨格”……エグゾスケルトンと呼ばれる一連の技術群なんだが、おれのはちょっと次元が違うぜ? こんな雑魚オートマトンと一緒にすんな」
「うんうん。全部聞いたこと無いわ。まるっと根こそぎ分かんない!」
「胸を張るようなことじゃないんだが? まったく……」
呆れるように返す彼ーーアルは小さくため息を返す。見上げる空は青く、また現時点での空気は旨い。
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