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故郷では味わえないような、素晴らしい清涼感だ。しかし、だからと言って状況は好転しない。現実は特に変わり映えしない。
現状がただ、動くだけ。
「せっかくだし、仕切り直そうよ」
踊るように槍を構え、ルルカは告げる。くるくると穂先が舞い、犀利な切っ先がアルへ向く。
「わたしの名前は、ルルカ=ガブリエル。〈聖十字槍魔法学園〉特待生。その名の元に、キミに一つ質問させてくれない?」
アルもまた、それに応える。身体を前傾に、右半身を前に。予め定められたプログラムに従い、拳を握って構える。
「〈スタンフォード・トーラス研究所〉元従軍研究員、アルベルト=ラプラス。こっちもアンタに質問がある」
アルはそう返答し、無貌のフェイスカバーが再び顔面を覆う。
ルルカは満足げに笑みを深くし、軸足に強化の魔法を付与する。
そして最後に、お互い、もう一つ台詞。
「ーーキミは誰だい?」
「ーーアンタは誰だ?」
声音が重なる瞬間には、すでに辺りは衝撃に包まれていた。
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