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俺の発言に、しょうがねぇなとぼやきなかせらクラスメイト達が角を曲がる。けれど俺はその後を追うことができず、引き返すと決意したとたん少しは動くようになった足をもつれさせながら入口の方へ向かった。
雑居ビルから出ると、さっきまで寒気や足の異常は嘘のように鎮まった。でも俺にはもう、ビルに入って近道を使おうという気力はなかった。
無理だ。もうこのビルには入れない。ゴールがとても遅くなってもいいから、正規のルートを走って学校に戻ろう。
でも、あいつら大丈夫だろうか。
走りながら背後を振り返る。そんな俺の視界に移る雑居ビルはずいぶん淀んだ空気の中にたたずむ印象だった。
結局俺は、普段足が遅いと言われている連中とほぼ同時に学校に帰り着いた。
疲れた体でビルに一緒に入った面々を探す。けれどあの時行動を共にしていた連中の姿はどこにもなく、日が暮れても戻ってくることはなかった。
学校、警察、PTAが総動員してクラスメイト達を探す中、俺は、たまたまそんな話を聞いたふうを装い、あの雑居ビルの話を担任に話してみた。
すぐさま教師数人と警察官が雑居ビルに向かったが、入り口も裏口も固く閉ざされ、中に入ることはできなかったようだ。そして、これは後から聞いた話だけれど、あの雑居ビルは数年前に殺人事件が起きて以来、取り壊される予定もないままずっと戸閉状態になっていて、人の立ち入りはできないようになっているとのことだった。
だったら、クラスメイトが言っていたことは何だったのだろう。そしてあの日に限り、どうして俺達は閉ざされている筈のビルに入ることができたのだろう。
いやそれ以前に、閉ざされ切っていたあのビルの裏口へ抜けたクラスメイト達は、いったいどこへ行ってしまったのか。
その行方はいまだに不明なまま月日は流れ、一年が経過した。
去年のこの件が原因で、今年からはもうマラソンさん大会は行われない。
あいつらが無事だったら、それを素直に喜べるんだけどな。
マラソン大会…完
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