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「それにしても、驚かされたな。」
おやじがぼやく。
おふくろの突っ走りは今に始まった事では無いが、おやじも俺も、何度も被害を受けている。
悪気は無いし、悪い事ばかりでも無い。
が、ひとつ間違えれば大惨事だった、という事もあった。
今回は加奈子が楽しそうだから良かったものの、別離を言い渡される可能性だってあったのだ。
おふくろのせいで破局になったら、恨んでしまいそうだ。
加奈子には、本当に感謝しなければ。
今も、おふくろと二人、台所で食事の支度をしてくれていた。
「お邪魔しましま~す。
譲治、帰ってるんでしょう?」
突然、玄関から女性が入ってきた。
叔母の澄子だった。
「おや、澄子ちゃん、いらっしゃい。
譲治がいる事、よく分かったね。」
「兄さん、こんにちは。
だって、車があるもの、すぐ分かるわよ。」
「ああ、そうか。」
おふくろの妹の澄子叔母は近所に住んでいて、ほぼ毎日顔を出しているらしい。
良く喋るにぎやかな叔母だ。
おふくろと二人で喋るとかしましい。
「譲治、ほら、あんたにお見合いよ。
写真持ってきたから見なさいな。
早く身を固めてお母さんたちを安心させてあげなきゃ。」
は?
見合い?!
「あんたには勿体無い、可愛いお嬢さんなんだから。
断ったらバチが当たるわよ!」
いや、いや、俺、見合いなんてしないぞ!
だって俺には加奈子が、、、
「ほら、写真!!」
成人式のだろうと思われる、振袖を着た女性の写真を見せられた。
「譲治、さん?」
台所から加奈子が顔を覗かせ、不安そうに見ていた。
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