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その1 ドラゴンとか盾とか剣とか、夕食はかまどでご飯
玄関のドアが激しく叩かれた。
「お父さん、大変、ドラゴン!」
塾に行くといって出かけた碧と友達が玄関に飛び込んできた。
短縮勤務で早めに戻り、寛いでいた裕のところに、子どもたちが駆け寄ってくる。
「ドラゴンって、ドラゴン?」事態が飲み込めない裕は、間の抜けたことしか言えない。
「そうだって、煙りだして、しっぽがあって……」大人びた裕美ちゃんが顔を赤くして言い募る。
「でも、まさか、どこに……」
「庭にというか道路に」長い髪を後で束ねた木の葉ちゃんが外を指さす。
トカゲでも見て騒いでいるのだろう。
裕はしかたなく、サンダルを引っかけ、一応の用心に玄関に立てかけてあった護身用の木刀を手に外に出た。
玄関から門まで、庭とはよべない狭い花壇があり、門の向こうは、住宅地の共有道路だ。
そこに、本当に本物のドラゴンがいた。
西洋の伝説の龍の姿をしている。
子象ほどの大きさのドラゴンだ。
ギロリと大きな目を光らせ、突き出た口からはおおきな牙がのぞき、広がった鼻からは白い煙が立ち上っている。
長い首と太く長いしっぽ、しっぽの先端は鏃のようになっている。背中から生えたおおきな翼で二度三度羽ばたく。生臭い風が顔にかかる。
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