殺す覚悟

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「ッ! ここは……ボスエリア?」 目が覚めたのは倒れた場所と、変わっていなかった まるで割れた事など無かったかのように、いつもの森が不気味に感じる 足元に転がっていた、愛用の剣を手に持ちながら周りを見渡す 「目が覚めるなら自宅のベッドだと思ったんだが……」 ログアウトするために街に戻ろうとする セーフティーエリアじゃないとログアウトできないからだ 緊急ログアウトができなかったのも気になるが 今は早く現実で安心したい 「フォレストウルフか」 草を掻きわける音の方へ、目を向けるとモンスターが居た 四足歩行の獰猛な、狼型の厄介な敵だ 獲物を追い詰め、どこまでも追いかけてくる 特に群れに遭遇した場合は、同族同士の連携がかなり厄介で 魔の森での一番の脅威とされている 落ち着いて、いつものように陣を構築する 違和感があっていつもより、集中できていないがなんとか形成できた 「GURUAAAAAAA!」 正面からこちらに飛び掛ってきたので、剣で受け止め、弾き返す ついでに、後ろに飛びのきながら魔術を起動する 制御があまくなっていつもより無駄の多い、4重のホーリーレイを放つ 「は? ……いや、なんだよこれ…………」 放たれた魔術は、フォレストウルフに直撃した だが、かすっただけだったのか、俊敏に森の中に紛れようとした 相手を追いかけるように、光の線が走り再び当たったと思った瞬間に ――――フォレストウルフの体は四散した―――― そんな魔術は組み込んでいないし、そもそも死体など残らない ポリゴンの集合体が砕けるよう消えて、それでおしまいだ だというのに、フォレストウルフだったモノが 木々に、地面に、ここで惨状があったのだと、証明するかのように散らばってる 心臓が早鐘を打つ、周囲の景色があっという間に後ろに流れる いつから走り出したかは覚えていない、何故走り出したかも覚えていない 不安だったのかもしれないし、早くログアウトしたかったのかもしれない 纏わりつく汗が気持ち悪い、怯えた小動物が逃げていく音が聞こえてくる 途中、幾度もモンスターらしき影は見えたが、瞬く間に視界から消えていく どれほど経ったかはわからないが、気がつけば立ち止まっていた かろうじて、そこが街道だと気づいて止まったのだろうか? 吐き気が込み上げてきて、地面に崩れ落ちた
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