水子が憑いてくる

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 本堂まで行くと犬が激しく吠えて、皆それにびっくりしましたが、びっくりしたのも一度きりで後はげらげらと笑っていました。本堂付近の山道を少し散策し「結局何も出ないね~」などと言いながら車まで戻った時には、もう夜も深まっていました。  駐車場を見ると自分たち以外にも、肝試しなのかそれとも他の用事がある人なのか、もう一台車が止まっていて、A君たちが帰ろうと車を出すと、その車も後をついてきました。  山道は曲がりくねっていて、さらに急な下りでスピードがでるのでA君はかなり慎重に運転しました。  すると、後方の車が激しくクラクションを鳴らしました。 「うるせえな」A君はいらだちました。道幅は狭く追い抜きも大変なので、慎重に走るA君をあおってきたのだと思ったのです。友人たちも苛立ち気に後方を見ていました。  その時でした。また急なカーブに差し掛かったのでA君がブレーキを踏んだ時です。ブレーキが何の手ごたえもなくスコンと抜けて、足の裏が床面にくっつくまで踏んでも何の手ごたえもなくなったのです。  気が付いた時にはブレーキがまったく効かなくなっていたのです。  A君は焦りました。「やべえ、ブレーキが効かねえ」  そうこうしている間にも車の速度はどんどん上がっていきました。ギアをローにしてエンジンブレーキを効かせるべきだったのでしょうが、パニックなったA君はなすがままそのまま峠を下ろうとしたんです。  すぐに曲がり切れなくなってガードレールに衝突しました。車内は大混乱で友人たちは口々に喚き声をあげていたそうです。
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