最終話 愛に溢れた境界線。

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最終話 愛に溢れた境界線。

お弁当を作り終えて、二人はキッチンで珈琲を飲んでいた。正に至福のひととき。 不意に匠が目の前に立ち、何か言いたげにしている。朱里のことで悩みでもあるのだろうか。 「匠さん、どうしたの」 「ねえ、一つ訊ねてもいいかな」 「はい、いいですよ。何ですか?」 「千景はタチになりたいの?」 「へっ?」 今……、何と仰っいました? 「前に言ってたでしょ?匠さんはネコ!俺がタチ!って」 それって前に心の中で言った台詞だよね。えーーっと。俺、もしかして口に出してた?それを匠さんが聞いてたってことで……。うわぁっ!恥ずかしい!めっちゃ恥ずかしい!穴があったら埋めてくれーーっ!! いやいや、埋めたら駄目っしょ。俺、そこそこ身長あるから、隠れられないし。 「いや、匠さん、あれは冗談でつい……」 「冗談なの?」 「えっ、ああ、まぁ……んっ」 俺、キスされてる。匠さんの舌が俺の中でいやらしく動いてる。 「ん……ふっ……んんっ」 堪らず歓喜の声を漏らす千景の咥内を匠は舌でじっくりと味わってから唇を離す。そして興奮の表情を浮かべる彼を自分の元へ引き寄せ、耳元で優しく囁いた。 「君がネコで俺がタチでもいい?」 匠の甘い声に千景の身体は熱を帯びる。 「匠さん、それって、もしかして俺のこと……」 「これからは匠って呼んで」 「えっ、は、はい。匠はもしかして……」 「うん、君が好きだよ。嫁になってくれるのも嬉しいけど、まずは恋人から始めようよ」 「俺が匠の恋人?」 「そうだよ。俺の恋人になるのは嫌?」 「なります!恋人にならせていただきます!!」 「ふふっ。良かった。じゃあ、これからもよろしくね」 匠はもう一度千景の唇にキスをしてから、朱里を起こしに寝室へと消えて行った。 夢じゃないよな。俺は匠さんが好きで、匠さんも俺を好きで……。恋人!恋人だってさ!! あれっ、でも何か大事なことが抜けてるような……。 はっ!!匠さん、自分がタチで俺がネコって。いやいやいや、それ無理だから。でも、ちょっとだけなら試してみても……。 千景は匠に抱かれる自分を想像して、頬を赤らめた。 親愛なる両親様へ お二人の大切な息子が姉の元夫である匠さんとともに、愛に溢れた境界線に足を踏み入れるまで、そう長くはかからないようです。 本当にこんな手紙送ったら、卒倒するだろうなぁ。ああ、どうしよう。今、凄く幸せだ。 でも、やっぱり俺、ネコよりタチがいいんだけどなぁ……。
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