第8話 突きつけられた現実。

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第8話 突きつけられた現実。

「結果から、申し上げます」 匠と千景に緊張が走る。 「本庄朱里ちゃんは、実年齢は三歳と六ヶ月ですが、言語に関しての発達は一般的な水準に比べて一年と六ヶ月の遅れがみられます」 「一年と六ヶ月ですか?」 「はい。簡潔に申しますと、娘さんの現時点での言語発達レベルは二歳です」 予想していたこととは言え、朱里の言語発達年齢が2歳と告げられ、2人の受けたショックはかなりのものだった。 「この検査は発達障害の確定診断を行うものではありません。しかしながら、言語発達に遅れがみられていることは事実なので、一般的な幼稚園に通われるよりも、児童発達支援センターや支援を兼ねた幼稚園に通われたほうがお子様の成長の手助けになると思います」 「先生、すみませんが、先ほど健診でこちらを紹介され検査を受けたばかりなので……。仰っていることが、いまいち理解ができないと言うか、あまりにも展開が急すぎて……」 「あぁ、そうですね。では、少しお待ちいただけますか?」 「……はい」 心理士は一度席を外し、戻って来ると匠に幾つかの書類を手渡した。 「こちらの書類は、支援センター兼幼稚園の資料と連絡先が記載されています」 「……はい」 「そして、こちらは知能検査及び療育手帳に関する資料です」 「療育手帳を申請するには児童相談所で知能検査をしていただき、知的障害があると認められた場合は療育手帳を取得することができます」 「知的障害ですか?」 「療育手帳がなくても、発達に遅れがみられる場合は児童発達支援センター兼幼稚園に入園することはできます」 「ちょ、ちょっと待っていただけますか?うちの娘は知的障害の可能性もあるってことですか?」 匠は興奮して思わず語気を荒げる。 「一概には言えませんが、成長発達に遅れがみられるお子様には知的障害の可能性も考えられると言うことです」 「朱里が知的障害?そんな、まさか……」 「今すぐに決断を迫るつもりはありませんが、なるべく早いうちに知能検査をお受けになり方向性を決められたほうが、朱里ちゃんのためには良いと思います」 「そう……ですね……」 「検査は終わりましたのでお帰りいただいて結構ですよ。ご自宅に帰られましたら、こちらの検査結果とお渡しした資料に目を通して頂いて、ご家族で話し合われてください」 「はい。では、これで失礼いたします。ありがとうございました……」 匠は心理士に一礼を済ませると、書類を脇に抱えたまま朱里と千景の手を引き、足早に部屋を後にした。
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