面接官の日常

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普段は宴会やら講演やらが行われているその部屋には、約200人ほどが礼儀正しく座っていた。 男女比は4:6ってところかな。 見渡す限りの同じ髪型・服装に、ここは刑務所か?と錯覚しそうになる。 私よりも何年か若い両の目は眩しいほどに輝いていた。 …そんなに楽しい事はここにはないよ、 と心の中だけでつぶやく。 服や靴を限定されて、 鞄や腕時計でさえ規定あり。 ある程度の自由が認められたヘアスタイルも実は"清潔感"という暗黙のルールが存在した。 ほとんどの学生が「人が好きです」 「部活の経験を活かしたい」「地域に貢献したくて」なんてのを綺麗に装飾して口にするだけ。 そんな彼らを選別するなんて。 いやそもそも、たった数十分という短すぎる時間でその人間を見抜くなんて。 …ため息がでるわ。 でもお金のためだから、お姉さん頑張るよ。 君たちもそうでしょう? 分厚い仮面を被って、私たちはお互いを騙し合う。 コンコンコン。 1回目がえらく小さいノックからは、 とてつもない緊張感が伝わってくる。 ドアの向こうにいつもよりも2音ほど高い声をかける。 ようこそ。若者たち。
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