面接官の日常

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ゴッと、生意気に机に腰かける背中を突く。 彼は今年から新卒採用グループに配属されたが、まだ面接官ではない。 学生が面接の順番を待っている会場にて、 諸々の説明や誘導をするのが仕事だ。 …それにしても、 今日可愛い子いたんですよー、と浮かれている姿は社会人としていかがなものか。 でも、たっぷり緊張してやってくる学生らはあの位の方が親しみやすいらしく、彼らの肩の力を抜く役目としては十分な働きをみせている。 「今日はビビッとくる子いましたか?」 「うーん…それはいなかった。でもまあ、 まだ2次選考だし、欲しい子を選ぶというよりは相応しくない子を切ることを優先して考えたよ」 「あんだけ人数いたらそうですよね。あ、空き缶捨ててきますね」 ウェーブがふわふわと駆けて行く。 空っぽの缶コーヒーを2つ抱えて走っていく姿に、何となく犬のそれを連想してしまい、つい笑いがこぼれる。 まあ何だかんだ甘いとこあるけど、いい部下を持ったって事かな。
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