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「やめ……、やめて……」
冷淡な顔で、右手に力を込めた。
私はそのまま気を失った。
それからほどなく、外の騒がしさで目を覚ました。
「私、助かったの?」
起き上がり、周囲を見るが淳一の姿はない。
ホッとしておしらせさんを見た。
もう鳴っていない。
外では消防車や救急車がひっきりなしにサイレンを鳴らしている。
外に出ると、たくさんの緊急車両が川を取り囲み、多くの住民が不安げに川を見ていた。
何事かと見ていると、びしょ濡れの淳一が担架で運ばれていたので驚いた。
そばにいた見物人に尋ねた。
「あの人、どうしたんですか?」
「奇声を発しながら欄干を飛び越えて川に飛び込んだんだ。どうも、助からなかったようだな」
「奇声って?」
「人形が襲ってくるとかなんとか騒いで叫んで。ああいうのを発狂したっていうのかな」
「人形が……」
何があったかは知らないが、おしらせさんが助けてくれたのだ。――
これが私の体験した不思議な話。
おしらせさんは、今も私の手元にある。
あれから、カタカタと鳴ることはない。
でも、いつかまた鳴るかもしれない。
その時は、絶対に無視しないでちゃんと気を付けようと思っている。
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