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戦後復興も落ち着いたころの話として。
『おしらせさんがカタカタ鳴ったので、家じゅうの戸締りをして親戚の家に避難した。翌朝戻ると、隣家に強盗が入り家人全員が縛られて殺されていた。犯人の足跡は千歳家の敷地にもあり、家にいたら全員殺されるところだった』
などなど、実例は多数だった。
私はおしらせさんの話が大好きで、何度もせがんでは同じ話を聞かせてもらった。
兄は、『くだらねえ』とバカにして本気で信じていなかった。
そんな兄の態度を見るにつけ、祖父は私に期待した。
『嗣子、おしらせさんをバカにしてはいけないよ。おしらせさんを信じないと、とんでもなくひどい目に遭ってしまうよ』
兄がバカにするのも無理はない。
それは、おしらせさんがカタカタ鳴るところを見たことがなかったから。
自分たちを怖がらせようと作った話だと、兄は信じていた。
兄は、友人たちへ、事あるごとにおしらせさんの話を面白おかしく吹聴した。
私は、おしらせさんを信じていた。
いつ鳴る日が来るのだろうかと、怖いもの見たさで神棚のおしらせさんをいつも眺めていた。
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