おしらせさん

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「………………」 「気付いちゃった?」 「え……」 「全部、俺の復讐劇だっていうことに」  私は、心臓がドキドキして苦しくなってきた。 「一体、なんの復讐だというの?」 「俺の祖父が軍手の投資詐欺に引っ掛かって大損。田畑を売って超貧乏になった」 「……」  祖父が繰り返し話してくれた軍手詐欺事件。それに、淳一の祖父も関わっていたことにショックを受けた。 「村人のほとんどが、同じ詐欺に引っ掛かって大変な騒ぎになった」 「それって……」 「お前の家に行ったとき、じじいの話を聞いたぞ。千歳家の本家と分家は詐欺に引っ掛からなくてよかった。騙された村人たちはバカだと嗤っていただろ」 「そういうつもりじゃない……」  その話を聞くのが好きで、何度もせがんだことはあるが、決して騙された村人たちをあざ笑うつもりではなかった。ただ、おしらせさんの不思議な話として聞きたかっただけだ。
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