幽霊屋敷

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「……あ、れは……人間だ……」 「俺、見たんだ……」  彼の異様な様子に、車の中に居た全員がゴクリと喉を鳴らしたと思うわ。 「あそこに、もう一人居たんだよ……だから……あの……」  近藤くんはガタガタ震えだしたかと思うと、いきなり叫んだの。 「お前らも聞いただろ? 女の悲鳴! あれって、あれってさぁぁぁぁぁぁぁ!」  頭を抱えて絶叫した近藤くんは、いきなり窓の外に目をやったかと思うと、大きく目を見開いて固まったの。  そして、赤信号で車が停まった瞬間。 「くるなぁぁぁぁぁ! うおぉぉぉぉぉぉぉ! 見殺しにした訳じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」って、狂ったように叫びながら車から飛び出して行ったの。  それから、近藤くんがどうなったかも、あの幽霊屋敷で何があったかも、新聞にもニュースにもならないから、全く分らないんだけどね。  きっと、近藤くんは何処かで生きているんじゃないかな?  ただ――  毎夜毎夜、あの幽霊屋敷で女の悲鳴が聞こえるっていう噂が絶えないんだよねぇ。  それが、『幽霊じゃなく生身の人間だったら?』  そう思ったら、あの幽霊屋敷に確かめに行くような馬鹿な真似は出来ないなって思うんだ。
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