あの夏を僕は忘れもしない。(衛人Side番外編)

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お祖父様が亡くなったのは俺がお祖父様のお屋敷の滞在をやめてから一週間後だった。 ステファンもお祖父様が亡くなったショックか、食欲を無くし、お祖父様が亡くなった一週間後に追いかけるように亡くなった。 お祖父様を失った俺は結局、お祖父様が望まれる人間を目指す事はせず、両親の望む息子でいるしかなかった。 彼女にしたように人を寄せ付けず、稽古と勉強だけに集中し、味方よりも敵を作る事が多いくらいになった。 中学から風紀委員会になると、どんどん人から恐れられ、鬼の深見だとか現代の土方様と呼ばれるくらいに。 だけど、高校一年の春。全てが変わった。 「おい、あれ……深見衛人だよな? 噂通り、こえー」 「あいつと目合わせるなよ? 何されるか分かったもんじゃねぇ」 高校の入学式当日に電車に乗り込むと、俺と同じ制服を着た人達が俺を見ながらひそひそ話していた。 俺は中高一貫校に通っており、この春から高等部に入学の為に中等部からそのままエスカレーターで上がってきた奴らにはすでに恐れられていた。 「おい! さっきからひそひそ、ひそひそ何だ? 」 朝、特に不機嫌な俺はつい、噂話をしていた生徒に攻撃的になってしまった。 噂をしていた男子生徒二人組は俺に突然話しかけられ、動揺する。 「文句があるなら堂々と言え。さっき、あれって言ってたなぁ? 俺様の事」 「す、すみません! 」 「そっちのあんたはあいつ呼ばわりしてたな? どういうつもりだ。あぁ? 」 俺は彼らを睨みつけ冷たく言い放つ。 「す、すみませんでした! 」 「俺はな、陰で人を悪く言う虫ケラが大嫌いなんだよ。次、俺をあれやあいつ呼ばわりしてみろ? 容赦しねぇからな」 「も、もうしません! 」 「本当にすみませんでした! 」 「ちっ。朝の俺はただでさえ機嫌が悪いってのに」 近くにいるのに小声で自分の陰口を叩かれるのは心底腹が立つ。
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