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降車駅に着き、駅の階段を下っていると、後ろの方から声が聞こえてきた。俺を呼ぼうとする少女の声が。
「あ、あの! 深見くん! きゃっ……」
階段を降りる俺を呼び止めようとするも、彼女は走って階段を降りる学生に突き飛ばされ、階段から転び落ちてしまった。
「おい、そこの貴様! ぶつかったら謝れ」
「ひっ! す、すみませんでしたぁ! 」
「俺じゃなくてあの女に……まあ、良い」
ぶつかったのに彼女に謝らない男にもやもやを感じながらも、俺は彼女の元へ。
「あの! 」
「鈍くせぇな、お前」
「へ? 」
「怪我は? 」
「す、擦りむいただけなので! 」
「血出てんじゃねぇか」
俺は溜息をつく。
清楚な雰囲気の黒髪のロングヘアの彼女はいかにも男子が好きそうなルックスだと俺は思った。俺はこの時は知らない、彼女の本性を。
「あ、あの! 生徒手帳、渡したくて……さっき落としたから」
彼女は俺に生徒手帳を渡す。
「俺の生徒手帳を届けに? 」
「は、はい」
「お前、馬鹿か? 普通、俺をびびって先生や生徒会長を介して渡させるぜ? 」
「だ、だってそんな事したら、届くまで時間がかかりますし! それに、その間深見くんが無い事に気付いて不安になったらって思ったら……」
「さっきの俺を見てたんだろ? 」
「見てたけど、私も人の悪口言う人は嫌いですから! 正しいと思いました! 」
俺に堂々と話しかけるとは変わり者だ。ステファンとの散歩中にあった女の子に似ている。
いや、まさかそんな偶然あるはずもない。
「鈍くせぇ上に変な奴。待ってろ」
「へ? 」
俺は鞄から絆創膏を取り出すと、彼女の擦りむいた膝に貼る。
「これで良いだろう」
「あ、ありがとうございます……」
彼女は何故か顔を赤らめながら膝に貼られた絆創膏を見つめている。
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