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「衛人様、クワガタです! 今年初めて見ました」
「何故テンション上がるんだ?」
「はさみに興奮します!」
「興奮?」
「な、何でもないです!」
夏休みの補習を受けた俺は桜坂と二人で帰る事に。たまたま木に止まっていたクワガタを見る桜坂。やっぱりこいつは変な奴だ。
「虫、平気なのか?」
「さ、触るのは怖いです。クワガタ見ると、ある事を思い出すんです。苦い恋の思い出なのかな」
「そ、そうか」
こいつにも過去はあるのに過去の恋の話を聞かされるとなんか、もやもやした。
「桜坂、両手出せ」
「へ? 何ですか? きゃっ! クワガタを手に乗せるのやめてください! クワガタ本当に触るの怖いんですって! 衛人様、クワガタ取ってください!」
「やだ。このままのが面白いからな」
「い、意地悪しないでくださいぃ……」
手に乗ったクワガタを見て本気で怯える桜坂の反応を見て俺は楽しむ。
きっと、俺にとってのあの思い出も苦い初恋の思い出ってやつなのかもしれない。
俺もクワガタを見ると胸が痛む。桜坂が……まさか、な?
(おわり)
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