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高校一年のバレンタインは人生で一番ドキドキすると思った日だった。
「衛人様、おはようございます」
「おはよう、桜坂」
登校すると、昇降口で偶然にも衛人様と会った。
朝から会えるなんて本当に幸せ!
衛人様が下駄箱を開けると、中からたくさん箱が溢れ出て来た。
「これは……」
「桜坂、処分しておけ」
「えっ! 」
これって衛人様宛のバレンタインのチョコレートだよね?
「どうせ全員断るし、俺は甘ったるい物が好きじゃないからな。何が入ってるか分からないし」
「は、はい……」
バレンタインのチョコレートの贈答行為自体は罰しなくて良いと衛人様は仰った。さすがにそこまでしたら全校生徒を敵に回しかねないと生徒会長にお願いされたからだ。
だけど、衛人様自身はバレンタインデーには全く興味が無いみたい。
「ひーめな! バレンタインのチョコレートは作ったの? 」
教室に行くと、凛が私に聞いて来た。
「つ、作ったけど……渡せず仕舞いかも」
「へ? 何で? 」
「衛人様、バレンタインデーに全く興味が無いみたい。寧ろ、毛嫌いしてそう」
一応、甘さ控えめなザッハトルテを作ったんだけどね。
「あげなきゃだめだよ! 衛人様だって姫菜のなら受け取るかもしれないし」
「だ、だめ! 絶対嫌がる」
本当はすごく受け取って欲しいんだけどね。
「衛人様、チョコレートを作って来ました! どうぞお受け取りください! 」
「桜坂、お前の手作りか? こんな庶民が作った得体の知れないチョコレートを俺に食えと? 」
衛人様は冷たい瞳で私に言う。
「あ、甘さ控えめなので! 」
「だったら、まずはお前が食え。毒見な」
「は、はい……きゃっ! 」
衛人様は私の顔にケーキを投げつける。
「ひでぇ顔。ほら、美味いか? 」
衛人様はにやりと笑いながら、私の顔にケーキを押し付ける。
「え、衛人様……」
「俺様がお前なんかの作ったケーキなんか食えるわけねぇだろ? お仕置きだ」
衛人様は冷たく言い放った。
はっ! また私ったら妄想を!
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