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「桜坂、俺……」
「衛人様、あの……衛人様は私がお嫌いなんですか?」
桜坂は不安げな表情で俺に聞く。今にも泣きそうな彼女に俺は動揺する。
「マシュマロの事か?」
「やはり意味を知ってて私に!?」
「待て待て待て。意味を知ったのは渡してからだ。俺はただ、前に家に来た客から貰って本当に美味かったからお前にも食べさせたくて……」
「えっ?」
今度はちゃんとあげるべき物を渡す。意味も調べておいた。
「ほら、仕切り直しだ。ホワイトデーのお菓子また買ってきた」
「そ、そんな! 悪いです! 衛人様はマシュマロの意味を存じ上げなかっただけなのに……」
「俺の気分が悪いからな。不吉な物をあげたみたいになったし。ほら!」
俺は桜坂にキャンディの瓶が入った紙袋を渡す。
「あ、ありがとうございます! キャンディ……可愛いですね! カラフルで」
「ああ」
「あの、後で一緒に食べませんか?」
「構わない」
「やった。本当、良かったです。私、今日衛人様に会うのが怖くて怖くて……」
こいつは馬鹿だ、本当に。
「馬鹿かよ。飼い犬を嫌う飼い主が何処にいる?」
「衛人様……」
「また泣きそうな顔しやがって」
「だって、本当に安心したんですもん」
いつも冷静でいられる俺を振り回すのはいつだってこいつ。本当、俺を狂わせる。
キャンディをあげたのはちゃんと意味を調べたからだ。
ホワイトデーにキャンディをあげる意味は……。
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