あおくんの憂鬱。

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「ただいまぁ」 いつも通り、帰宅するとリビングのテーブルにはラップをかけたお皿とメモが置かれていた。 「今日も母さんは遅いのか」 父から慰謝料を貰っているとはいえ、女一つ手で俺を育てるのは厳しい母は朝から晩まで働き詰めだ。 おしどり夫婦と思われていた両親。だけど、父の不倫が原因で家庭は崩壊。 アメリカに父を残し、俺と母さんは即座に日本に帰国した。思えば、両親からは振り回されっぱなしだ。 父の仕事の都合でアメリカの小学校に転校させられるわ、離婚してから母がやたらと俺に八つ当たりするようになったし。 正直、生まれてくる家庭を間違えていた気がする。ふと、小学3年の春を俺は思い出す。 「あおくん、おはよう! 一緒に学校行こう!」 「おはよう、姫菜。うん、一緒に行こう!」 毎朝、俺と姫菜は一緒に登校していた。 「あおくん、今日のお昼休みは図書室に一緒に行こう?」 「えっ? また読み聞かせ?」 「うん! 今日は鬼の絵本なんだって」 「うちの学校の読み聞かせ、怖い絵本ばっかだから俺は苦手だなぁ。地獄の話とかあるし」 「そうなの? 私は鬼さんとか好きなんだけどなぁ」 「姫菜はおかしいよ。算数の田中先生をかっこいいって言うし。学校で一番怖いのに」 「おかしいのかなぁ。じゃあ、あおくんは姫菜と一緒に図書室に行ってくれないの?」 上目遣いで言われたら断る事は出来ない。 「行く。怖いけど、姫菜を守れるくらい強い男になる為にはびびりやめなきゃね」 「さっすがあおくん! 凛は絶対ついてきてくれないからさ」 「姫菜のお願いは何でも聞くよ」 「ありがとう。じゃあじゃあ! パケモンで姫菜が欲しかった子もくれる?」 「うん。姫菜の為にちゃんとゲットしといたよ。ついでにレベルも99にしといた」 「ありがとう! レアキャラなのによくゲット出来たね。しかも、99レベって……」 「姫菜のお願いだからね。俺はあまりあのキャラを可愛いとは思えなかったけど……」 「えー? 可愛いよ! 目つき悪くて」 小さな頃から姫菜の感性はおかしかった気がする。
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