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「ただいまぁ」
「葵、遅かったじゃないか。もう6時回っているぞ」
「姫菜と遊んでたんだ。姫菜んち近いし……」
「葵、まだ小さいんだから早く帰るようにしろ。危ないだろ」
帰宅するなり父に叱られた。姫菜とたくさん遊んでいたかったんだから仕方ないじゃん。
「貴方」
母がリビングから父に声をかけた。
「あぁ。葵、話がある」
「あ、うん……」
ランドセルを廊下に放り投げ、俺は父と共に母のいるリビングへ。
「葵、父さんな。アメリカ本社への異動が決まった。二週間後、家族で日本を発つぞ」
「えっ? 二週間後……? 引っ越すって事?」
「お友達と別れるのは寂しいとは思うが、家族3人離れるわけにはいかない。葵、すまない。だが、仕方ない事なんだ」
父は俺に頭を下げながら言う。
「嫌だよ! 二週間後なんて急すぎるよ! 俺、アメリカなんかに行きたくない! 友達とバイバイなんてしたくない! お父さん一人で行ってよ!」
「葵! 仕方ない事なのよ! 我慢しなさい!」
「嫌だよ! 絶対行きたくない! ずーっと一緒にいるって約束したんだ、姫菜と……」
「葵……」
「お父さんとお母さんは勝手すぎる! 大っ嫌いだ!」
「葵!!」
あまりにもショックで俺は部屋に駆け込んだ。
「嫌だよ……姫菜……姫菜……会いたいよ。俺、姫菜と離れたくないよ……」
悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。初めて両親に恨みを感じた。
だけど、どんなに拒んでも俺は行くしかなかった。
「転校……?」
「うん。お父さんのお仕事の都合でアメリカに」
翌日、俺は姫菜と凛に話した。
「アメリカ!? そんな遠くだともう会えないじゃん……やだよ! あおくんがいなくなるのやだよぉ……」
「本当に何とかならないの? 葵」
「お父さんとお母さんが俺を置いて行けるはずないよ。お父さんが単身赴任なんてお母さんが嫌がるもん」
いつだって両親は勝手だ。俺をたくさん振り回す。
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