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「そうだよね。まだ小3だからね……」
「姫菜、あおくんがいなくなるなんて嫌だよ! ずっとずっと一緒にいたいよ……」
姫菜はずっと泣いている。あぁ、だから嫌だったんだ。
姫菜に話したらたくさん泣くと分かっていた。姫菜に寂しい思いをさせたくなかったのに。
「姫菜を連れて駆け落ちするしかないかなぁ」
「葵、駆け落ちはまだ無理だよ。姫菜とあんたは子供だから」
「凛はいつも現実的だね」
「寂しいけど、仕方ないんだよね。親には逆らえないから、子供は」
「凛、私は諦めたくないよ! 嫌がるあおくんをアメリカに連れて行くなんておかしいよ! お父さんとお母さんに相談してあおくんを桜坂家に……」
「ひーめな。気持ちは分かるけど、難しいと思うよ?」
どうしてまだ子供なんだろう。たくさんお金がある18歳だったら姫菜と結婚して新しい家に暮らせるのに。
「姫菜、約束するよ」
「あおくん?」
「昨日話した通り。離れ離れになっても俺は姫菜がずーっと大好きだから……だから……もう少し大人になったら俺は姫菜を迎えに行く、絶対に。結ばれたいからね」
「絶対約束だよ。私……あおくんとずーっとずーっと仲良しでいたい! だから、待ってるね?」
「うん」
俺と姫菜は泣きながら抱き合った。諦めるしかない自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
毎日たくさん泣いた。子供は無力だ。
「葵、そろそろ行かないと」
「う、うん。姫菜、元気でね? お手紙、書くから」
「うん! 私もたくさん書くね」
姫菜と別れる日が来るまであっという間だった。本当に小さな頃からずっと一緒にいたから離れる事は初めてで苦しくて苦しくて仕方なかった。
俺の家の前で姫菜はずっと泣きながら俺との別れを惜しんでいた。
「姫菜、俺……絶対ちゃんと姫菜の元に帰るから。だから、待ってて。姫菜、本当に本当に大好きだよ」
「あおくん……。うん、また絶対会おうね! たくさん遊ぼうね」
「うん、約束!!」
姫菜の額にキスをすると、俺は泣きながら車に乗り込む。
今でも思い出す、顔を真っ赤にして涙を流す幼い彼女の事を。
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