深見秀斗は間違えたく無い。(深見社長番外編)

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深見秀斗は間違えたく無い。(深見社長番外編)

「貴様は退学だ」 「そんな! せめて停学にしてくれよ! 風紀委員長」 退学通告を出すと、男子生徒は泣きそうな顔で俺の腕を掴む。 「触るな、汚らわしい」 男子生徒の腕を振りほどくと、俺は冷たく言い放った。 「ちょっと他校とケンカしたくらいで退学って何だよっ」 「規則を守れない人間は我が校には不要だ。さっさと消えろ。貴様のような品位のない人間と関わる時間は無駄でしか無い」 俺はリストに退学と書き込むと、その場を立ち去る。 高校2年の夏、中等部時代から続けている風紀委員の仕事を開始してからもう5年目だ。 「早く昼食を取らねばな」 俺は恐らく全校生徒から恐れられている。 目を合わせれば退学にされると言う者まで現れた。 別に構わない。 誰かと深く関わるのは時間の無駄だ。深見グループの御曹司たるもの、愛とか友情とか全て不要だ。全ては父の言う通りにすれば良い。 俺はロボットのような物だから。 深見秀斗という人間に生まれたからにはそうする事しか出来ない。 風紀委員の業務を終えると、学食で昼食をとる。本来なら使用人に作らせた弁当をいつも食べるが、今日はうどんを食べたい気分だったから断った。 うどんを受け取ると、席につき携帯していた七味を大量にかける。 身体に良くないと分かっていても、この味が食べたくなってしまうのだ。 「わっ! 真っ赤だね!」 「また、お前……か」 彼女が話しかけて来ると、俺は溜息をつく。 「身体に悪いよ?」 「黙れ。俺がどうしようと俺の勝手だ」 「けど、よくこの食べ方しているからほっとけないよ」 彼女は俺の真正面の席に座る。 「何故座る?」 「私がどうしようと私の勝手だ」 彼女は俺の真似をして言う。 「お前くらいだな、俺にしつこくつきまとうような奴は」 「奴じゃない! 響子! 森村響子」 「友人と一緒ではないのか」 「深見くんと食べたいから今日はこっち来ちゃった」 「鬱陶しい、腹立たしい、今すぐ消えろ」 「女の子に対して紳士じゃないですねー」 「お前だからだ」 「一人で寂しくないの?」 「俺は一人が好きなんだ。お前みたいに能天気な奴とは違う」 彼女……森村響子と出会ったのは高校の入学式の日だった。俺が校舎内を歩いていると、俺の前を歩いていた彼女が突然倒れた。通行の邪魔だったから仕方なく医務室に連れて行っただけだというのにやたらと彼女は俺につきまとうようになった。 俺を良い人だと馬鹿な事を言い回って。
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