深見秀斗は間違えたく無い。(深見社長番外編)

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「深見くん! 何読んでるの?」 「ドフトエフスキーだ」 「ドエスキー?」 「違う。読書の邪魔をするな」 「お話があって来たんだよー! 校外学習、一緒の班になろう!」 「俺は不参加で希望した」 「えー! どうして?」 「動物園などに行って何の意味がある? 動物は嫌いなんだ」 俺が拒んでも、彼女は気にせず翌日も話しかけてきた。 「一緒に行かなきゃだめ! せっかくなんだし、思い出作ろう?」 「思い出とか要らない。遊びに行くぐらいなら勉強に専念していたい」 「校外学習なんか特に風紀乱れるかもしれないよ! 深見くんがいないと安心できないなぁ。あぁ、困ったなぁ」 「なんだ、その大根芝居は」 「一緒に行こう? 期間限定発売の激辛一味あげるから」 「し、仕方ないな」 「やった!」 なんか流された気がしてならないのだが。 「響子、深見くんも一緒で大丈夫かな? 罰せられそうで怖いよ? 私」 「大丈夫! 深見くんって実は優しいし」 「はぁ? 何言ってるの?」 「私だけが知ってるんだなぁ。ふふっ」 俺が優しいとか勝手な事を友人に言いふらす森村響子に俺は呆れる。 俺には優しさは不要だ。 「深見くん、何やってるのー?」 「切符とやらを買うのは慣れていなくてな」 校外学習当日になると、俺は切符の買い方に悩む。 移動手段は車だけだったから無理もない。 「このボタンを押すんだよ!」 「ややこしいな。あんな字の小さくて細かい路線図を見て料金を選ぶのか」 「慣れないと辛いよね」 「車て行けば良いものを」 「社会勉強だよ!」 森村に聞きながら無事に切符を購入した。 「切符を入れて改札を抜ければ良いの」 「面倒くさい仕組みだ」 溜息をつきながら改札を抜ける。 「電車、少し遅れてるみたいだね」 「ホーム、やたらと人が多くて落ち着かない。座る場所は無いのか?」 「ああ、イス埋まっちゃってるねー」 「俺だけ車で行かせて貰えば良かったな」 慣れない電車移動なんてストレスになるだけだ。座れないとなると、読み途中だった本も読めないし。 「響子、動物園行くの久々だな」 「あ、マサくん。そうだね! 小さな頃以来?」 「響子、昔はトラにビビりまくってたよな」 「もう、忘れてよ! 今は平気!」 森村は親しげに同じ班の男子と話し始める。 こいつとは幼馴染らしく、よく話しているよな、森村。別に興味ない。 興味……ない。
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