深見秀斗は間違えたく無い。(深見社長番外編)

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「何とか座れて良かったよね」 「だな。響子、昨日のドラマ見たか?」 「見た見た! 犯人意外な人だったよね」 電車にようやく乗ると、俺は座りながら読み途中だった本を開く。 「俺は犯人もう分かってたし」 「えー! マサくんすごい!」 「分かりやすいじゃん。ヒントだらけだったわ」 本に集中したいのだが、何故か集中できん。 「そういえば、深見くんはドラマとか見るの?」 「一度も無い。父に脳が腐ると言われているからな」 「そ、そうなんだ……」 班の連中は俺が発言する度に緊張した顔をする。 だから、来たくなかったんだ。空気を乱すのは分かりきっていた。 「深見くん、見て! 猿! 可愛いね」 「可愛い……か? 俺には理解できん」 動物園に着くと、森村ははしゃぎ始める。 早く帰りたい、今日は気温が高いし、くらくらする。最近、勉強漬けで寝ていなかったのもあるが。 「狼って深見くんに似ているよね」 「まあ、目付きは悪いからな」 「けど、可愛いよ! 私、犬派だから好きだよ! だから、深見くんも好きなのかな」 「は、はぁ? 好きとか簡単に言うな。本当馬鹿な女だ」 「事実だもん!」 「そんな事言ったらお前の幼馴染が勘違いするぞ。さっきだって親しげだった」 「マサくんはただの幼馴染だよ! もしかしてヤキモチ?」 「自意識過剰バカ女だな」 「ひっどーい!」 人関わる事なんて必要無いと思っていた。情なんて要らない。孤独でいる事を愛せと躾けられてきた。 なのに、彼女はズケズケと俺の心の中に踏み込んでくる。 「響子、あっちにモルモットの赤ちゃんいたよ」 「わっ! マサくん、教えてくれてありがと!」 素直で明るくて友達もたくさんいて、優しさもある森村響子は俺とは真逆な人間。なのに何故俺に関わるんだ……? 「うっ……」 突然目眩がして、俺は頭を抑える。 水分補給をするのを忘れていたからだろうか。気持ちが悪くて汗もいつも以上にかいている。 「深見くん!?」 気付いたら俺は倒れてしまっていた。
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