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「ん……」
「気が付いた!?」
目が覚めたら俺は部屋のベッドの中にいた。
目覚めた俺に声をかけてきたのは森村響子だった。
「何故森村が……」
「深見くん、突然動物園で倒れたから執事さんに迎えに来て貰ったの。どうしても心配だったから無理を言って私も深見くんちに」
「執事に任せれば良かっただろ。お前あんなに動物園楽しみにしていたじゃないか」
「た、楽しみだったけど! 深見くんがいないと心配で楽しめないよ……」
「どうしてそこまで?」
「そ、それは……」
「とっとと帰れ。風邪をうつして俺のせいにでもされたら困る」
「けど……」
「二度言わないと分からないのか?」
違う、そんな言い方すべきではない。
「ごめん。私、しつこいよね……」
「……校外学習、意外と楽しめた。少ししか見られなかったが」
「えっ」
「……お前の校外学習台無しにした責任なら取る」
「本当!? なら、一緒に出かけてくれる?」
「は? 俺と一緒に出かけるというのか?」
「うん! 映画行きたい」
「動物園じゃないのか……」
「良いよね?」
「責任取る為……なら」
「良かった!」
責任取る為だ、別に一緒に出かけたかったわけではない。
「じゃあ、次の土曜日に」
「了解! 楽しみにしてるね」
自分が自分じゃなくなっていく感覚がある、彼女といると。
「秀斗、今日は倒れたそうだな」
「申し訳ありませんでした……」
「自己管理が出来ないお前が悪かったんだ。今後は気をつけろ。深見グループを継ぐ時には休まる暇すらないのだからな」
夜になると、帰宅した父はすぐさま体調管理がなってなかった俺を叱った。
父を失望させたくないという一新で勉強をひたすらして体調崩して失望させるとか馬鹿だな、俺は。
「今後は二度とこのような事が無いようにします」
「ああ。来週は藍川グループの社長とご令嬢と食事会だ。俺に恥をかかせるなよ? この婚姻は深見グループの未来の為に重要なのだから」
「分かっております」
来週は婚約者と初めて会う事になる。
結婚も仕事も全部父が決めるから俺は従うのみ。決して逆らえない。
そう、逆らわないつもりだったんだ。
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