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「深見くん! 映画めちゃくちゃ良かったね」
「俺は恋愛映画とかよく分からないが」
「うぅ。じゃあ、つまらなかった?」
「映画より森村が激しく泣いているのを見るのは面白かっ……」
「ひどーい! 次は深見くんが大号泣する映画連れて行くからね」
「つ、次は無い! 今回はこないだの責任を取る意味で……」
「私が充分償って貰えたって感じない限りは次もあるのっ」
「無茶苦茶だな」
「あっ! 深見くんが笑った」
「わ、笑ってなどいない」
「いや、絶対笑いましたー!」
初めて二人で出かけた日、俺は自分には無いと思っていた感情に初めて気付いた。
俺は……森村響子に惹かれている。
「私、深見くんの笑った顔好きだな」
「は?」
「もっと笑った方が良いよ! 恥ずかしいなら私の前だけでも良いし」
「笑うか。前にも言っただろ? 相手に隙を見せるような真似は……」
「でも、ずっと強張った顔しているときっとすっごく疲れちゃう。リラックスも大事だよ。私は笑っていて欲しいな、深見くんに」
森村が初めてだった、俺に向かって飛び込んで来たのは。
「美味しい! やっぱりここのナポリタンは最高だなぁ」
「ケチャップで炒めただけのパスタだろ?」
「絶対美味しいから深見くんも食べて! 食わず嫌いはいけないよ?」
「頼んでみたからには食うよ」
映画を観終えた後は二人で喫茶店へ。初めてナポリタンというものを食べた。
「悪くないかもな……」
「でしょ!? 良かった。深見くんが気に入ってくれて!」
「嫌いじゃないな」
「ふふっ。あっ、見て! あそこにいる子供可愛い! ケチャップたくさん口元につけて」
「だらしがないな」
「そこが可愛いんだよー!」
「俺は子供をあまり好きになれない。自分が子を持つという想像すら出来ないし」
「けど、いざ自分の子を持ったら可愛いんじゃないかな? 私は男の子が良いなぁ」
「何故?」
「私を守ってくれるから」
「意味わからん」
子供はいつか持たなければならない。会社を継がせる為に。
ロボットがロボットを生み出すだけ。
愛せないかもしれない。俺は父から愛されていると実感した事が無いから。
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