告白

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「チッ チッ チッ……」 三年二組の教室で、 時計の針が静かに時を刻む。 「先生……」 「……」 「コラ!亮介!」 「ハッ!」  制限時間30分の化学小テスト 開始から既に45分は経過していた。 「先生、もう時間過ぎてるよ?」 「あっ!しまった。 何で早く教えてくれないんだ?」 「タダでさえ難しくて時間足りないのに、 教える訳ないじゃん」  クラスの仲間が全問回答するまで、 声をかけずに見守っていた様子だった。 「でも、何度も呼んだんだぜ。 先生気づかないし、恋煩いでもしてんじゃねーの!」  そう呟いたのは、サッカー部キャプテンで、 真夏だと言うのに冬用パーカーを着込む横山だった。 「何言ってんだ。 ちょっと考え事してただけだ」 ズボシだった――。  思春期の青春ど真ん中にいる彼らにとって、 恋に悩む男心を読み取るのは簡単な事だと思う。  大人と子供の境界線、今その狭間にこの子達は生きている。 成績なんてどうでもいい。 人として仲間を思いやり、助け合う気持ちを大切に、 そして、人を好きになる。 恋をして愛に目覚める、それが青春! その事だけ、生徒には伝えたかった。 あの頃、気づく事の出来なかった自分のために――。 「時間オーバーした分、宿題範囲増やすからな! えーっと」 「キーンコーン――」 「ラッキー!先生もう終わりだよ」  一瞬にして、教室の生徒達は姿を消した。 「うーん」 「いい結束力だ…… うん? 誰だ? さっき、亮介って呼び捨てにしたヤツは?」
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