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バレないようにコッソリと横顔を盗み見ると、副社長とはまったくタイプが違うが、この男もやたらと整った顔をしていることが分かった。
副社長が落ち着いたイケメン演技派俳優だとしたら、この人はアイドルグループにいてもおかしくなさそう……。
そんなバカな事を一瞬でも思ってしまった自分の、恋愛偏差値の低さに、自分で自分を殴りたい気持ちを押さえて、私は再度窓の外に目を向けた。
「それで?私はこれからどこへ?私実家暮らしなので親が心配すると思うんですが」
努めて冷静に言ったつもりだったが、またもや男は肩を揺らして笑うと、
「親が勧める婚約者と会うのに、怒る親がいる訳ないだろ?」
「え?親も知ってるんですか?」
「当たり前だろ」
はあ?どこまで本人無視で話をしてるのよ?もう誰も信じられない!
お母さんの昨日の涙ももう知らない!こんなの、こんなのって!
そしてさっきまで、100分の一ぐらいの確率だか、もしかしたら、副社長に呼ばれたのは結婚の話ではなく、仕事の話かもと思っていた私の期待は、今の一言で木端微塵に砕け散った。
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