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着物をきた元華族とやらのおばあさまに、宝塚歌劇団にいたというお母さまが出てきて……『あなたが?』とクスリと笑われるのだと決めつけていた。
慣れた手つきでセキュリティを開けて、エレベーターに乗せられると私はその景色に声を上げてた。
「すごい……」
エレベーターは静かに音もなく上がっていく。
キラキラと光る街の明かりがだんだん遠くなっていき、東京都心の光が眼下に広がった。
ポンと軽快な音がして、エレベーターが止まった事に気づき、慌てて向きを変えた。
40Fの文字に、40階という事が解り、改めて高い所に来たのだとわかり、もう一度チラリと夜景を見た。
「降りるぞ」
「あっ、ハイ!」
慌てて晃さんの後姿を追うと、忘れかけていた自分が嫌われなければいけない事と、先ほどまでの怒りを思い出し気合を入れる。
「え?ドアここだけ?」
エレベーターを降りると、ふかふかの絨毯がひかれている事にも驚いたが、目の前に重厚感のある茶色の扉が一つしかない事にも驚いた。
「そうだよ。最上階。ペントハウスだよ」
なに……その言葉……。庶民には縁遠い……。
「ほら入れよ」
いつの間にかその扉が開けられていて、中に入れと言われ私は足を止めた。
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