お姫様じゃない!

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いくら婚約者だの言われても、夜に知らない男の人の家に入るなんて。 今更何を言ってると自分でも思ったが、怖気づく自分がいた。 「あの……やっぱり私……」 そう言いかけた所に、 「晃?何してるんだよ?」 部屋の中から晃さんより低く響く声に、ドクンと心臓が音を立てた。 「あー、お姫さんがさ……」 二人の会話がなぜか遠くから聞こえているような気がしそうなぐらい、自分の心臓の音がうるさい。 「なに?」 扉の向こうから出てきたその人に、私は意を決して目を向けた。 「私結婚しません!帰ります!」 一気にそれだけを言って、ジッと相手の瞳を睨みつけた。 ウッ……。負けそう……。 何このイケメン!この世の人?凡人には目の毒でしょ! そんなバカな気持ちと、さらにうるさくなる自分の鼓動になんとか負けないように、ギュっと唇を噛みしめた。 写真と同じ顔をした清水翔太郎という人は、180㎝はあるのだろう、私を無言で見下ろした。
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