お姫様じゃない!

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「お前が離せっていったんだろ?」 クスリとイジワルな微笑みを浮かべ、それだけ言うと、さっさと一人で長い廊下を歩いていくその男を、私は呆然と眺めていた。 誰これ? 冷静沈着、表情を変えないという噂はなんだったの? 写真のスーツ姿と違い、ラフな短パンに、黒の半そでのTシャツ。 和服を想像していた私は、そのギャップにも驚いた。 写真や会社で遠くからみていた副社長はいつも隙がなく、髪型もきっちりと固められていたが、今はサラサラとした髪が揺れていた。 「ほら、お姫ちゃん立って?」 目の前に出された手が、晃さんの物だと認識するのに少し時間を要したが、ようやく私は立ち上がると、諦めて翔太郎とやらの後を追った。
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