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「アルコールの方がいい?」
「いえ……ありがとうございます」
ペットボトルを受け取ると、私は両手で握りしめた。
ひんやりとした感触が心地よくて、小さく息を吐いた。
「お前はお姫様だったんだよ」
「はあ……?」
真面目な話かと思えば、いきなりの言葉に私はやっぱり帰ればよかったと、すでに後悔していた。
「本当の話。江戸時代、笠井家は大名で、お前の祖先はそこのお姫様だった」
「へえ、今とは大違いですね」
本当にお姫様だったと聞いて、とりあえずこの二人の気まずい雰囲気を壊すためにも、私は仕方なく相槌を打った。
「そして君には愛する人がいた。それが俺の先祖。まあ、俺もそこそこの家柄だったが、おまえは綺麗だった」
「私じゃなくて、先祖ですね」
おまえに俺って……私たちの事みたいに言わないでよ。
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