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その夜、翔太郎に言われて婚姻届けを記入した。
意外にもあっさりしたもので、私はなんだか気が抜けた。
「結婚式はしたい?」
そんな翔太郎の言葉に、なぜかちくりと胸が痛んだが首を振った。
「政略結婚なんだし、いつ離婚するかもわらかないのに、大げさなことはしたくないです」
静かに言った私の言葉に、翔太郎は少し眉根を寄せて複雑そうな顔をした。
「でも、女ならドレスや式に夢があるんじゃないのか?」
そりゃそうだよ。私だって人並みに夢があった。
シックなエンパイアのドレス。長いマリアベール。
いたって普通で地味な私にだって、それなりに結婚に対しての理想はある……。
でも……。
少し考えた後、言葉にしようと思ったが、翔太郎を前になんの言葉を言えばいいかわからず、私は言葉を飲み込んだ。
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