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「悪い。そういうつもりで言ってないから」
私の涙をそっと指で拭うと、翔太郎は悲し気な表情を浮かべた。
「ごめんなさい……余計なことして。すごく疲れた顔をしてたから……」
泣きながら言った私を、翔太郎は優しく抱きしめた。
「ありがとう。でもお前にも無理をさせたくなかった。こんな夜中に眠っていたのを起こして、飯をつくらせるなんて」
自分勝手でイジワルだと思っていたが、やっぱり翔太郎は優しい。
「私も無理をして欲しくないです。少しでもできる事なら役に立ちたい」
呟くように言った私の言葉に、翔太郎は私の肩に顔を埋めた。
しばらくそのままの姿勢で、お互い何も言わない時間が流れた。
私はなぜかこの腕の中が心地よくて、安心して、守られている様な気がして、寂しい気持ちや、ぐちゃぐちゃだった心が落ち着いていくのがわかった。
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