プロローグ

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結城さんは自分の机の引き出しから鍵を取り出した。 「一度帰ってシャワーを浴びてくる。12時には戻るから。」 「少し寝た方がいいですよ。」 「そうするよ。椎名くんも無理しないように。じゃあ、後で。」 「ありがとうございます。おやすみなさい。」と結城さんを送り出してからハッとした。 僕は慌てて椅子から立ち上がり、スタッフルームのドアを勢いよく開けた。 初夏の日差しが降り注ぐ明るい廊下で、白衣の背中が何事かとこちらを振り向いた。 「すみません、言い忘れました。今年も志田村さんが来ます。いつも通り7月25日からです。」 「ああ・・・もうそんな季節になったんだね。」 結城さんはポツリと呟き、「了解、ありがとう。」と小さく手を振って廊下の角を曲がっていった。 僕はスタッフルームに戻って志田村さんに〈お待ちしています。〉という旨の返信をした。 ホッとひと息ついてペットボトルのお茶を飲み、ふと窓の外を見やった。 昨夜、空を覆っていた雲はすっかり流れ去り眩しいくらいの快晴だ。 「いい天気だなぁ・・・。」 何となく声に出して言い、そして心から願う。 彼女がこの町にいる間はずっとこんな青空が続きますように、と。
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