15人が本棚に入れています
本棚に追加
結城さんは自分の机の引き出しから鍵を取り出した。
「一度帰ってシャワーを浴びてくる。12時には戻るから。」
「少し寝た方がいいですよ。」
「そうするよ。椎名くんも無理しないように。じゃあ、後で。」
「ありがとうございます。おやすみなさい。」と結城さんを送り出してからハッとした。
僕は慌てて椅子から立ち上がり、スタッフルームのドアを勢いよく開けた。
初夏の日差しが降り注ぐ明るい廊下で、白衣の背中が何事かとこちらを振り向いた。
「すみません、言い忘れました。今年も志田村さんが来ます。いつも通り7月25日からです。」
「ああ・・・もうそんな季節になったんだね。」
結城さんはポツリと呟き、「了解、ありがとう。」と小さく手を振って廊下の角を曲がっていった。
僕はスタッフルームに戻って志田村さんに〈お待ちしています。〉という旨の返信をした。
ホッとひと息ついてペットボトルのお茶を飲み、ふと窓の外を見やった。
昨夜、空を覆っていた雲はすっかり流れ去り眩しいくらいの快晴だ。
「いい天気だなぁ・・・。」
何となく声に出して言い、そして心から願う。
彼女がこの町にいる間はずっとこんな青空が続きますように、と。
最初のコメントを投稿しよう!