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風見さんの言う通りそれから毎日毎日、毎日毎日毎日毎日、天文台の周辺で耕作さんの姿を見かけた。
ある時は外で所長と談笑し。
またある時は館内でコブラとマングースの如く藤代さんと睨み合ってたり。
1日に何度も風見さんに誘いを断られてもめげることなく。
休みの日には結城さんの部屋のインターホンを押してピンポンダッシュ。
更にその罪を僕に着せようとする悪行三昧。
とにかく自由な耕作さんにペースをかき乱されながら必死に仕事を覚える3ヵ月間は、努力と忍耐を試される過酷な日々だった。
まぁ、そのお陰で瞬く間に時は過ぎ、最大の懸念であった「もう来なくていい。」と言われることもなく晴れて7月1日を迎えた。
研修期間が終わり正職員にステップアップする日だ。
僕は意気揚々と出勤した。
始業の13時になると全員がスタッフルームの席につき、いつものように結城さんが口を開いた。
「それではミーティングを始めます。まず最初に今日7月1日から椎名くんが正式に当天文台のスタッフとなります。そこで水森所長からひと言頂きます。」
いつもはミーティングには参加しない所長が結城さんの隣に座っているので不思議に思っていたが、そういうことだったのか。
何を言われるんだろう・・・。
胸がドキドキした。
所長は咳払いをひとつしてから話し始めた。
「椎名くん、この3ヵ月間は慣れない土地に慣れない業務で大変だったと思うが本当によく頑張ってくれたね。これからもその調子でよろしく頼むよ。わしからは以上だ。」
あの水森所長がわざわざ僕の為に時間を割き、ありがたいお言葉まで・・・。
この感動は一生忘れられない。
許されるならボイスレコーダーで録音しときたかった。
「それでは椎名くんからもひと言お願いします。」
結城さんに促され、僕は立ち上がって所長や先輩達の顔をぐるりと見回してから言った。
「水森所長、暖かいお言葉を本当にありがとうございます。この3ヵ月間はわからないことばかりで皆さんにご迷惑ばかりかけてしまいましたが、これからはそういうことをひとつでも減らせるように頑張りたいと思います。どうかご指導のほどよろしくお願いします。」
僕が頭を下げるとみんながパチパチと拍手をしてくれた。
いい職場に巡り会えた。
ここに来て本当によかった・・・。
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