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「いっやぁー、ホントめでてぇなぁ。」
その時、背後から聞こえてきたのは聞き覚えがあり過ぎる嵐を呼ぶあの声。
「ようやくここにこうやって出入りできる日が戻ってきて俺もすっげー嬉しい。毎日歩いてくんの、ホントかったるかったわ。」
僕が恐る恐る振り返ると・・・案の定、そこには日焼けした顔に不敵な笑みを浮かべた耕作さんが立っていた!
「ええぇっ!?」
僕は思わず藤代さんの方へ跳びのいた。
「い、いつの間に!?て言うか、なんで耕作さんがここに?どこから入ってきたんですか!?」
出入口が開いた気配はないし、それ以前に耕作さんが出入口のドアを開けられるはずがない。
なぜならこのスタッフルームのドアのセキュリティを解除する為には専用のIDカードが必要で、それを持っているのは所長と僕ら4人のスタッフだけだからだ。
もしや室内で繋がっている所長室から入った?
いや、例えほふく前進をしたとしても僕に気づかれずに背後に回るのは不可能である。
確かに前々から神出鬼没な人だとは思っていたがまさかここまでとは・・・。
「いちいち説明すんの面倒だから、実演。」
耕作さんはそう言うや否や僕の眼前でフッと姿を消し、数秒後にまた同じ場所に現れた。
「こうやったんだ。わかったか?」
へなへなへな・・・。
僕は床の上に座り込んだ。
生まれて初めて腰を抜かすと言う経験をした。
ーーーこれは一体どういう事態だ?
何が起きたんだ??
しばし考え込んで、ふと閃いた。
「・・・みなさん、意外と人が悪いですね。本当にびっくりしちゃいましたよ。」
僕はボヤきながら机に手を掛けてどうにか立ち上がった。
「これって新人が受ける手痛い洗礼と言うヤツですよね?どんなトリックを使ったんですか?」
白衣の埃を払う僕をみんなはきょとんとして見つめている。
何だかおかしな空気だ。
「あのよ・・・。」
小さな溜息をついてからそう切り出したのは藤代さんだった。
「言っとくけど俺達はお前にこんなつまらない悪戯を仕掛けるほどヒマじゃない。それに部外者立ち入り禁止のこの部屋にわざわざこんなヤツを招き入れるようなことをするわけないだろ?」
風見さんもうんうんと大きく首を縦に振った。
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