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「耕作、頼むから話を進めさせてくれ。」
現状を見兼ねた結城さんが頭を抱えながら耕作さんを制した。
その隣で所長はいつもと変わらずニコニコしていて陽だまりの縁側でお茶でもすすっているようなのどかさだ。
2人の対照的な様子に普段なら笑みが零れるところであるが、その時の僕にそんな余裕はない。
「椎名くん、驚かせてしまって申し訳ない。これから詳細を説明する予定だったんだが、何せ君も知っての通り耕作は順を追ってとか辛抱とかを知らない男でね。」
なぜか結城さんが謝り、「まずは座ってくれるかい?」と穏やかに言った。
「はい、着席っ!」
この混乱を招いた張本人である耕作さんがぼくの両肩に手を置いて理不尽とも思える上からな態度で椅子に座らせた。
「耕作!余計なことをしなくていいから黙ってそこに立ってろ!」
結城さんはそれを見逃さず珍しく強めの口調で耕作さんを諌めた。
耕作さんは口を尖らせたが結城さんに本気で叱られるのはさすがに怖いらしく、僕の真後ろでまるで廊下に立たされた小学生のようにおとなしくなった。
少し胸がスッとした。
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