II. 星と大地と、耕作さん

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ジャンさんは腕組みをして少し腹立たしげに言葉を継いだ。 「皆、一度くらい宇宙空間に浮かぶ地球の姿を見たことがあるだろう?まさに瑠璃色で、こんなに美しい惑星(ほし)は他にない。その美しい母星が壊れ始めていることに薄々気づきながらも地球人はそれを解決しようともせず、未だくだらぬ争いに明け暮れている。地球人に紛れて生活している我々の仲間の中には各国の政財界に属している者もおり、人種や国と言う線引きを越えて力を合わせるよう働きかけているがなかなか上手くいかない。これは地球に限らないことだがどんな生物も力を持てば持つほどわからんちんになってしまうようだ。」 「わ、わからんちん?」 「ああ、我々の母星もそうだった。元々、エリシアの主たる生物は我々ではなかった。知恵と技術を手に入れエリシアの長となった彼らは文明の発達と共に争いを繰り返し、自らの手に負えぬ兵器を作り上げた挙句それによって引き起こされた環境変化に対応できずに滅んだ。我々の先祖はエリシアの片隅で生きる小さな種族だったが、自然に逆らわず暮らす術を知っていたお陰でかろうじて生き延びることができた。しかしエリシアの地表はもう生物が生きられる環境ではなく、我々は地下に国家を築き現在の発展に至っている。同盟を結ぶ星々も多かれ少なかれ同じような経験をしてきた。我々は進歩と引き換えに多くの物を失ってしまったがそこでようやく歴史に学び、二度と過ちを繰り返さぬこと、繰り返させぬことを誓ったのだ」 ジャンさんの話は乾いたスポンジが水を吸い込むように僕の胸の中に染み込んだ。 これまで自分が漠然と感じながらもうまく言葉にできないでいたことを全て代弁してくれているような気さえした。
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