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「どうしたら地球は同じ轍を踏まずに済むんでしょう?」
地球の未来がエリシアの現在と重なり、答えを持たない僕はすがるような気持ちで聞いた。
ジャンさんは小さく首を振った。
「それはまだわからない。我々は地球を含む太陽系全体を保護区に指定し、手遅れとならぬうちに地球人を立ち上がらせる最良の方法を模索しているところだ。共に事に当たれれば良いのだが、残念ながら地球人はまだ未成熟ゆえ我々地球外生命体の存在を知れば混乱してそれどころではなくなるだろうからな。」
確かにジャンさんの言う通りだ。
僕自身がそうだったように多くの人間は映画や本などで刷り込まれてるせいか“異星人=地球を侵略するもの”と考えがちだ。
そんな彼らが地球の未来を本気で心配してくれているなんてそうそう信じられるわけがない。
人間同士であっても心の底から信じ合うことは至難の技なんだから。
「そこで我々は水森博士を代表とする協力者の手を借り、この遥町に本拠地を置いた。第一段階としては地球人が自発的且つ平和的に諸問題を解決できるように促していきたいと考えている。仲間達が秘密裏に地球人として暮らしているのはその為だ。私も仲間達も地球がエリシアやその他の傷ついた惑星のようにならないことを願っているが、我々にできることはそう多くない。最終的には君達地球人が決断し、行動を起こさなければならない。」
僕はさっきの自分が恥ずかしくなった。
自分達のことなのに「どうしたらいいか?」なんてジャンさんに甘えててどうする。
もちろん何をすればいいのかなんて今はわからないし、すぐに有効な行動を起こせるわけではない。
しかし僕達の母星を守る為にまずしなければいけないことがぼんやりながらわかった。
それはこの地球上で起きている事実を自分自身で知ろうとすること、そして自分の頭で考えること。
今、地球人に最も欠けているのはそういうことなのかもしれない。
「・・・これは明らかに僕達の問題なんですよね。
どんなに些細なことでもいいから、それぞれが自分にできることを見つけなければいけませんね。」
「その通りだ。みんなが椎名くんのような意識を持ってくれたなら地球を守ることはそう難しいことではないのだがな。」
ジャンさんの声音には切望と苦笑いが滲んでいた。
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